アルプスの絵具

スイスの山岳地帯を列車の車窓から見る。谷の向こう側には自動車が走り、こちら側には列車が走っている。

深い谷底にはエメラルドグリーンの白い糸が一筋。淡い緑色の川の流れは谷底を隠し、私たちは目を止める。

「この水は濁っているのだろうか?」

誰一人として疑惑の目を向ける者はいない。その水は氷河の中を流れ、何千年の時を今に伝えている。

大自然が作った美しさ。そう感じることができるのは、ここがスイスで私たちはアルプスの真ん中にいるのだという事実があるからかもしれない。他の場所で同じ景色を見れば、工場の汚れた廃水だと感じるだろう。

同じ景色でもキャンパスが異なれば、違う絵具に見える。その美しさが、スイスアルプスの魅力なのかもしれない。